出版文化社 共同出版事業部

1.企画立案・テーマの決定
2.構成案の検討
3.原稿の執筆と取材・調査
4.編集・組版
5.編集・校正
6.白焼き校正・色校正
7.印刷・製本
8.PR・販売促進企画案、実行
9.出版取次会社への見本納品と配本交渉
10.書店への営業活動
11.販促方法
12.インターネットでの販売
13.返品受入れ、改装、書籍保管、在庫管理
14.書店からの追加注文の受付、出荷
15.出版取次会社への請求、精算
16.在庫本の配送、処理

 



1.企画立案・テーマの決定

「売れる企画」とは何か?

出版に携わる者なら誰もが背負う命題です。

村上春樹さんのようなベストセラー作家ならば、1作出して何十万、数百万部と売れていきます。制作費はペイできるし、次回作の潤沢な資金も得られることでしょう。ただ、そういう本は暁天の星のようなものです。

一方で、売れる売れないはともかく、この本を世に問いたいという熱い想いで立てられる企画もあります。この志に賛同してくれる出版社を探すわけですが、残念ながら断られる場合も多いことでしょう。納得いく説明がなかったとしても、往々にしてその本が売れるか売れないかをシビアに判断しています。出版社としても一企業ですから、売行きが見込めない本を出すわけにはいきません。志はもちろん大事ですが、数字やデータで相手を納得させることも大事といえます。

出版社の企画会議では、企画内容とともに、対象読者、見込販売数、類書の有無、刊行時期といったことを話し合います。これらの点についても、想定しておくといいでしょう。

無事に企画が通って本ができたとしても、自分が作りたかったものとは違ってしまった。そんな不満もままあるようです。

いっそ、自分が出版社になってしまったら――。とことん自分が納得いく企画と内容を練り上げていけばいいのです。

ただし、出版社としての責任がかかります。著作権侵害や名誉毀損など、他人の権利を侵すことのないよう、企画の内容には十分に注意をしてください。

 



2.構成案の検討

企画のテーマに添って、原稿を執筆します。

まず、構成案を作ります。

*全体で何章立てにするか

*話の流れは適切か

*どの内容をどこに書くか

*内容の重複はないか

*各章のバランスは取れているか(内容によって長短が出ることは構いませんが、あまり極端な場合は再検討を)

全体を見渡しつつ、上記の項目をチェックしていってください。

構成案に沿って仮の章タイトルや大見出し・小見出しを付けておけば、これが仮の目次になります。

構成案がおおよそ固まったら、各章どのくらいの分量を書くかについても検討をつけておきましょう。

作りたい本をイメージしてください。文庫本サイズですか? 写真がたくさん載っている本でしょうか? 本のサイズ(判型)によって、1頁に入る文字数が違います。1頁あたりの文字数×書籍の総頁数=必要な原稿量です。

よく見かける単行本のサイズは四六判(128mm×188mm)といい、1頁あたり大体600字(40字×15行)ぐらい入っています。

これで総頁数300頁前後の本を作るとしたら、600字×300頁=18万字ぐらい必要になります。400字詰め原稿用紙450枚程度です。

5章立てを想定している場合は、1章あたり90枚、すなわち60頁になります。これが多いか少ないか、再検討したうえで、いよいよ執筆に入ります。

 



3.原稿の執筆と取材・調査

構成案に基づき、原稿執筆に取り掛かります。

各章のテーマ、大見出しに沿って、そこに書くべき登場人物や事柄、本文内容に時間軸がある場合は、その期間などを設定します。次に取材・調査計画を立てます。5W+1Hで詳細を詰めましょう。いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのようにして、というポイントをあらかじめイメージできれば無駄のない、内容の濃い取材・調査ができることでしょう。

ひと通り取材・調査が終わったら、最初に作った構成案を見直します。取材・調査が峠を越えたときには、新たに多くの情報を入手していますので、それを元に作り直します。この時には、各章ごとの枚数のバランスもイメージできるようになっているでしょうし、内容の前後関係もより明確になってきます。もし、この時点で内容についてイメージできていないとしたら、まだ取材・調査が足りない可能性があります。

あとは執筆あるのみです。

書き始める前に文体を決めます。「だ・である調」なのか、「です・ます調」なのか、格調高い文章にするか、親しみやすい文章にするか、などです。

取材・調査が充実したものであればあるほど、色々と書き足していきたくなりますが、そうすると当初のテーマがぼやけてきます。あまり欲張りすぎないようにご注意ください。

また、一旦書き上げたら客観的に自分の原稿を眺めてみてください。他人に見てもらってもよいでしょう。編集者などはプロの視点で、自分では気づかないような指摘をしてくることもあるでしょう。ただの自慢話になっていないか、「てにをは」は正しいか、読者の心に響くか――。何度も何度も推敲を重ねて、完成原稿は出来あがります。

原稿ができたら、掲載する資料の整理に入ります。写真、図版、挿絵など、書籍を魅力的に見せる資料を選びます。タイトルやキャプションという説明文をつける方が読者に親切です。

本文のどこに、どの資料を入れるかを指示しなければなりません。資料に番号を振って、それを本文の挿入箇所にも明記しておくとよいでしょう。

これで一通り、原稿が整いました。

 



4.編集・組版

次にゲラを作成します。

ゲラとは、書籍の体裁通りにレイアウトを組んだ校正刷りのことです。1ページ入る文字数、書体や文字の大きさについても出来あがった書籍と同様に作成されます。イメージ通りでなかったら、色々と見本を出してみましょう。

近年の出版業界では、InDesignなどのアプリケーションで印刷データを作成し、完成したデータを印刷会社に渡して、印刷・製本を発注する、という流れが一般的になっています。

これをDTP(Desk Top  Publishing)、もしくは組版作業と言いますが、この業務はプロでないとできません。いずれかの組版会社に依頼することとなります。当社でも承っています。

 



5.編集・校正

校正作業をすすめます。

ゲラはPDFなどのデータでやりとりされることが多くなりましたが、必ず出力した紙で校正することをおすすめします。ディスプレイ上で校正しようとしても、精度も落ちますし、時間がかかります。原稿通りに組みあがっているかどうかをチェックするのは、「原稿照合」。文字の大きさや書体、写真の入れる位置は指示通りなどを見ていきます。また、組みあがったゲラを読みながら、内容を確認していくことを「素読み」といいます。修正しなければならない箇所には、赤字が入り、編集者が疑問に感じた点や他の資料とデータが異なる点などは鉛筆書きした指摘が入っています。これを見ながら、著者は自分が直したい箇所に赤字を入れ、鉛筆書きの指摘に対しても修正すべきか検討を加えていきます。

修正されたゲラが出てきたら、正しく直っているかどうかをチェックします。これを赤字照合といいます。現在は、データ上の修正のため、うっかり前後の文字まで削除されていたということもままあります。必ず、修正箇所の前後も合わせて確認しましょう。

漢字、平仮名、送りがななどの統一は、いずれかの用字辞典を使って基準とすると良いでしょう。当社では迷ったら『朝日新聞の用字用語の手引き』に従っています。

「校正 恐るべし」とは、昔から言われてきたことです。

本文中の「タクシー」が「クタシー」になっていたとしてもみっともないだけですが、人名などは間違ってはいけない箇所です。また、著者名、発行年月日、発行所名、発売所名、定価、コード番号なども、間違うと書籍が出来あがった後に大きな支障を来すこともあります。このような大事なポイントではくれぐれも指差し確認で、校正をしてください。

1回目に出てきたゲラを初校ゲラ、修正をして新たに出てきたゲラを再校ゲラ、その後、三校、四校と続きます。これ以上、修正がないというところまで十全に校正をしたら、校了とサインをして、いよいよ印刷所へと送られます。

 



6.白焼き校正・色校正

印刷所に入れたデータは、数日後、白焼きという形で出てきます。印刷する際には、1枚の紙の裏表に通常16ページ分を印刷するのですが、印刷所のオペレーターがこちらから手渡したデータを基に印刷データを作成していきます。

白焼きで確認すべき点は、1p目から終わりまでノンブル(ページナンバー)が通っているか、柱の位置がズレていないか、目次と本文の見出しは合致しているかなどです。ここで見つかったミスは、組版データを修正して、さらに印刷所のデータを修正しなければなりませんので、時間とコストの大きなロスになります。ゲラ段階で緻密に校正しておきましょう。

また、本文のカラーページや表紙カバーの色合いがイメージ通りになっているかどうかをチェックすることを色校正といいます。

表紙カバーについては、タイトル、著者名、掲載写真、発行所名、発売所名、バーコード、ISBNコードなどを間違うとせっかく作った本が、書店へ流通しないようなミスにもつながりますので、くれぐれも注意をしてください。

 



7.印刷・製本

実際の用紙に印刷された見本(抜き刷り、一部抜き、抜き取りなどと言います)が手元に届きますので、最後の校正をします。少なくとも前工程で修正を入れた部分が正しく直っているかどうかを必ずチェックしましょう。

万が一、この段階でミスが見つかったら! 工程を止めるかどうか即断をしなければなりません。製本、出荷されてからでは、大きなコストがのしかかってきます。そこまで致命的なミスでなければ、重版の際に修正する、正誤表を挟み込むといった対応が考えられます。

書籍完成までは苦難の道が続きますが、それを乗り越えて完成した書籍を手にした喜びは何ものにも代えがたいことでしょう。

 



8.PR・販売促進企画案、実行

通常の書籍の場合、校了後7日から10日ほどで完成します。印刷所にデータ入稿をしてから完成するまでの間に、PRと販売促進の準備を急ぎましょう。まずは、マスコミ各社に本を届けて、紹介記事を依頼します。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌など、ニュースリリースをつけて書籍に関係するような媒体をあらかじめ選択しておいて、送っていきます。PRの方法や送り先のリストについては、当社で用意しておりますのでご相談ください。

本は、いまや書店で売るだけではありません。読者がいそうなところ、集まっているような媒体に本を届けてゆく、知らせてゆく、ということで、直接に注文をいたただくことも可能です。企画の段階から販路についても考えておきたいところです。

 



9.出版取次会社への見本納品と配本交渉

出版社から出版物を仕入れ、書店に卸売をする流通・販売会社を取次といいます。トーハン、日本出版販売という大手の他に、大阪屋栗田、など数十社あります。書店によって、仕入先を取次1社に限定している場合もあれば、中堅規模(200坪)以上の書店などは、2つ以上の取次と取引を行う場合もあります。取次も取扱い書籍は医学系のみなど、書籍の分野によって住み分けている場合もあります。アマゾンは大阪屋と日本出版販売を使って書籍を仕入れています。

新刊ができあがったら見本書籍を持って取次の仕入窓口に出向き、各取次と口座を開設している書店への配本数を相談します。こちらの希望部数を伝え、取次に検討してもらい、後日、決定納品部数を確認します。

ここで何冊受け入れてくれるかによって、初回の配本数が決まりますので、見本を持参するときが配本の要所です。

たとえば、著者や出版社がトーハン経由で全国の書店に合計1,000冊を配本してほしい、という希望をもっていても、トーハンは書籍の内容や販売適応性を考慮して、自社と取引のある書店でいくら売れそうか検討した上で部数を提示してきます。ここで書籍を見込み生産している出版社側と取次会社側の思惑違いによって、こちらの希望が通らないことがあります。そのため事前にゲラ(校正刷り)などを持参して窓口担当者の意見を聞き、おおよその部数の見当をつけます。

 



10.書店への営業活動

取次窓口担当社が販売に積極的になること。そのためには、書籍の注文を事前に書店から集め、取次会社との部数交渉の際に受注リストを渡します。配本部数を増やすための一つのアピールになるでしょう。

書店からの受注方法としては、訪問営業、ファックス営業、電話営業、書店チェーン本部営業などがあります。

当社では、これらの方法をいくつか組み合わせて注文冊数を集めています。何人ものスタッフが、パッと目をひくデザインや文言は何かと頭を悩ませながら何人ものスタッフの目でチェックしつつ、チラシ作りをしています。電話注文などでも、ベテランスタッフが書籍のウリをご説明しています。

取次への納品後に注文を集めて、追加で書店へ配本することも可能です。最初に配本をして、売り切れた書店に本の追加補充の注文を取ることなど、本は出版社倉庫-取次-書店店頭を行ったり来たりしながら売れていくものです。性急な結果を求めず、じっくりと販売してゆくのが、大事なポイントです。

 



11.販促方法

取次を経由して書店の店頭に並べられた書籍が売れるかどうかは、書籍そのものの力によるところが大きいのですが、それに加えてPR、販売促進企画も重要なカギとなります。

本が入荷した時期に合わせてPRや販売促進企画、広告を行わないと、本は大きく動きません。売れない書籍は3~7日で書店の店頭から姿を消し、2,3日書店の倉庫で眠っている間、店頭での問い合わせや注文がなければ取次会社へ返送されます。つまり、売れない本は10日以内で書店から取次会社に返品されることもあるわけです。返品後に広告を打ったとしても、書店に並んでいないわけですから、宣伝効果は減ってしまいます。

また、全国1万4,000店の書店で自分が出した書籍の売れる条件、環境が同じように整っているわけでもありません。ビジネス書ならば、日経新聞に広告を打ち、地方よりは都市部の書店に多めに配本するなどの戦略が必要です。現在、新刊書籍は1日約200点と言われています。それらすべてを受け入れることは書店にはできませんので、タイムリーかつ読者にフィットしたPRと販促を仕掛けたいものです。

 



12.インターネットでの販売

インターネットでの販売方法は、大きく分けると2つあります。

1つはアマゾンや楽天、7&iショッピングなどのネット書店に販売を委託する方法です。各ネット販売会社は取次会社と契約をしているので、それらと口座を開けば販売されることとなります。当社でも口座を開設しています。

もう1つには、自身のWEBサイトで販売する方法です。WEBサイト上で書籍の表紙画像や紹介文を掲載し、メールボックスへ注文が入るようにします。もしくは、ネット書店のリンクを貼り、受注や発送をネット書店に委託する、という方法もあります。

自身のサイトで集客した読者がネット書店で購入すると、自身が受け取る売上金は少なくなります。ただ、手間が省けること、ネット書店での販売実績がランキングにも影響することなどを考慮すると、できるだけ活用したいところです。

自身でサイトを持っていない場合もご安心ください。当社のサイトには刊行書籍を紹介するページがあり、そこから当社もしくはアマゾンにて注文を受け付けるようになっています。

 



13.返品受入れ、改装、書籍保管、在庫管理

取次会社と出版社の取り決めでは、委託品の場合、6ヶ月以内に返品をしないと買取をするというのが一般的です。しかし実際には自由返品制で、取次は出版社に対しいつでも返品でき、いつでも返金を求められる、というのが現在の書籍取次制度と言ってよいでしょう。

さまざまな販売努力にもかかわらず返品されてきた書籍のその後を一般的な例で説明します。

書店から取次、取次から出版社の倉庫へと返品され、返品受入として計上されます。書籍に注文が入るまでは、毎月、倉庫代(在庫料金)がかかります。書店からの注文が入り、再度出荷できれば、倉庫在庫が徐々に減って、いずれは底をつき、増刷となるわけですので、ここを目指したいものです。

このように書籍は、倉庫と書店を行ったり来たりするため、カバーが汚損することがあります。読者の手にはきれいな状態で届けたいですし、書店も汚損のある本はいやがります。そのため、カバーをはずして新しいカバーに付け替える「改装」という作業があります。よって、初版で書籍を印刷するとき、表紙カバーは返品の改装用に多めに刷っておく必要があります。1,000冊に対して最低でも350枚分ほどの刷り増しは必要と考えてください。

 



14.書店からの追加注文の受付、出荷

書籍に力があると、いずれ書籍は一人歩きを始めます。つまり、こちらが仕掛けてもいないのに新聞や雑誌、テレビなどのマスコミに取り上げられたり、人から人へと評判が広がっていきます。またはウェブサイトに書籍の概要を掲載しておくことで検索にかかって、注文が入るということもよくあります。

そのように、発売当初だけではなく、書籍の販路は広いので、だらだらと売れていく、というのがこの業界の一般的な販売動向です。これらの販売の動き、注文にもこたえなければなりません。書店や取次会社からはいつ注文が入ってくるかわかりませんので、当社ではVANという書籍注文システムに対応しています。また、当社では東京と大阪にて電話やFAXによる注文、問い合わせも受け付けています。受けた注文は、倉庫から出荷をして、月末に請求書を出す、という作業を間断なく続けています。

 



15.出版取次会社への請求、精算

出版取次の取引条件には、主に3つの形態があります。

委託販売の場合、通常、6ヶ月間委託販売され、7ヶ月目に売れた冊数を計算して、8ヶ月目に代金が支払われます。

当社のサービスを利用してご自身が発行元として書籍を出版する場合、注意しなければならないことがあります。本来、委託販売ですから、書籍の所有権は発行元にあるはずですが、税務署の見解としては、取次から売上計算書というのが納品月の翌月に発行されるので、いったん売上が上がっていると考えて、売上計上を求められる場合があります。これは会社の決算に影響しますので、軽視できません。詳しくは幣社の担当者に直接お尋ねください。委託には、書店の常備品として納品するような場合に適用される1年以上の委託販売「長期委託」という種類もあります。

注文販売とは、書店から注文の連絡が入るか、出版社の営業が注文をもらいに行って出荷することをいいます。これは注文扱いなので、納品した翌月に代金が支払われます。納品をした段階で、売上に計上することになります。

延べ勘定とは、精算月を3ヶ月後や6ヶ月後などの精算時期をあらかじめ決めた上で出荷する注文品です。3ヶ月延べ勘定のことをサンノベと言います。

 



16.在庫本の配送、処理

書籍の注文数が落ち着いてきたら、今後、在庫しておくべき冊数や期間について検討しましょう。いつまでも、ある分だけ置いておくと倉庫の保管料が嵩んできます。とはいえ、多くの書籍がロングテールでたまに注文が入ってくるというのがこの業界の特徴ですから、在庫を0にするわけにもいきません。注文が落ち着いた後、3年以内にどれぐらいの本が動くのか、というのを予想し、その分を在庫として取り置きします。余った本は断裁処分をするか、図書館に献本するケースもあるようです。

また、リサイクル業者などに引き取ってもらう場合は、かならず引き取り冊数の証明書をもらっておきます。税務上では資産償却の証明書類となりますので、厳重に保管しておく必要があります。