出版文化社 共同出版事業部

少し前、テレビで流れていたApple iPad AirのCM(1)を覚えていますか?
アイスホッケーの練習に励む選手、レスキューヘリのパイロット、
草むらでカマキリを見つける子供、歌舞伎の稽古をする役者が登場し、
彼らは皆、iPad Airを手にしています。色々な人生の断片的な映像とともに、
「力強い劇は続き、君も詩を寄せる事ができる――君らの詩とは?」
と心を揺さぶるナレーションが流れていました。

さすがAppleです 。クリエイティブな企業は、CM一つとっても
映像、音楽、言葉のセンスが素晴らしい! と、心を揺さぶられました。

調べてみたところ、CMの最後に繰り返される「力強い劇は~」のフレーズは、
アメリカの詩人ホイットマンの『草の葉』という作品からの引用でした。
確かにこのナレーションでも「ホイットマンの詩を――」として、
紹介されています。
さらには、このナレーション自体、
映画『いまを生きる』(1989年公開)の台詞(2)とのことでした。
この映画は学園ものの名作で、私も好きな映画の一つです。
懐かしい想いとともに、「引用」ということについて考させられてしまいました。

というのも、あのCMから受けた感動の半分は、映画『いまを生きる』
に捧げるべきものなのではないだろうかと思ったからです。
CMの中にも、Appleのサイトにも、映画からの台詞だ
ということは見当たりませんでした。
このCMを見た人がナレーションに共感し、
Appleのクリエイティビティを称賛し、
結果的にiPad Airの売上につながっているとしたら……。
なんだかフェアじゃないと思うのは私だけでしょうか?

これを出版業界にあてはめてみたらどうでしょう。
次回は、この話題をお送りしたいと思います。

(1)「あなたの物語は何ですか?」『Apple』2014.05.23閲覧
https://www.apple.com/jp/your-verse/

(2)「[和訳] Appleの新iPad CMはあなたの情熱は何かと問いかけている」
『Peanut Butter and Jelly 』最終更新日:2014/01/15
http://watono.com/2014/01/what-will-your-verse-be/

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